Interview with the management経営者インタビュー

未来から愛される企業を目指して〜(株)ヌマザワ〜

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山形

2022.09.04

社会貢献/自己実現

未来から愛される企業を目指して〜(株)ヌマザワ〜

雪深い山形県新庄市を拠点に、葬祭事業を展開している株式会社ヌマザワ。その歴史は、明治26年の創業に始まり、127年の月日が経った現在も地域住民に愛され続けています。

「永きにわたり地元で営業を続けられてこられたのは、地域の皆さまからの理解と、社員一人ひとりの努力のおかげです。これからも地域に愛され、頼られ、必要とされる会社であるために、本業はもちろん今後はSDGsの活動も通じて持続可能なふるさとの未来に貢献したいと考えています」

そう、にこやかに語るのは代表取締役・沼澤紘一様。地元に根ざし商いを続けてきたヌマザワの歴史を守りながらも、新しいことに挑戦し続ける姿勢。そこには、地域と社員を大切にする経営理念とSDGsの取り組み、描いてるビジョンがありました。

まずは、創業の経緯についてお聞かせください。

株式会社ヌマザワは、明治26年創業。私で5代目になります。実は創業当時は八百屋を営んでいたんですよ。小さな個人商店だったので時代の流れとともに仏具店へ転身。それが現在の葬祭業としてのヌマザワの始まりです。

小さい頃から家業を継ぐことは決めていたのでしょうか。

三兄弟の長男ということもあり、家族からも後継ぎについてはよく言われていたので、幼いながらに自然と自分が継ぐのだろうなと思っていました。長期休みのたびに家の仕事を手伝っていましたし、人の死に対して嫌な気持ちはありませんでしたね。

今でも心に残っているのは、大学時代に祖父が亡くなったときのこと。通夜の晩、親戚同士で語り合っていると「おじいちゃんが頑張ってきた会社を、おまえも引き継ぐんだぞ」と言われ、家族から期待されているんだな、と後継ぎとしての自覚が芽生えました。

そこから実際に後を継がれて、会社を経営する上で大事にされている想いを教えてください。

経営理念として2つの言葉を掲げています。

一つは、「”ありがとう”と言われるお葬式」。この言葉を掲げたのは、社員の想いを知ったことがきっかけでした。葬儀の仕事は24時間365日、呼ばれたらすぐに駆けつける、お客様への対応も失敗が許されない、精神的にも肉体的にも大変な仕事です。そんな中なぜうちで働いてくれているのか。聞くと「お客様からの“ありがとう”という感謝の言葉が、頑張る原動力になります!」と返ってきたんですね。

葬儀の仕事ほどお客様の人生やご家族様に入り込むサービス業はありません。だからこそ、大変な反面やりがいも大きい。お客様に感謝をされる会社をつくることが、巡り巡って社員がやりがいを持てる組織にもつながると思ったのです。

もう一つは、「想いをつなぐ葬儀」。これは創業当初から受け継がれているヌマザワの根幹にある考えです。故人様とそのご家族様、地域の方々、社員、それぞれの「想い」をつなぎ、感謝の気持ちや思いやり、ふるさとへの愛を、葬儀を通じて伝承していく。そんな意味を込めています。

沼澤様の言葉からは社員への想いを感じるのですが、何かきっかけがあったのでしょうか。

実業家の稲盛和夫さんの著書で心に残った経営哲学を取り入れています。

例えば「経営者とは誰よりも努力をしなければいけない」という考え方。現場に出ている頃は、誰よりも早く来て遅く帰りガムシャラに働いていたのですが、マンパワーでできることには限りがある。自分にとって誰にも負けないものってなんだろう?と考えたとき、誰よりも社員のことを考える経営者になろうと思ったんです。そのためにはどうしたら良いかを考えて、働く環境を整えたり、機会を提供したり、社員が満足して働ける努力を始めました。

それから「正しい経営」という言葉も胸に留めています。判断に迷ったとき、お客様・社員に喜んでもらえるかどうかが、判断基準です。迷うこともたくさんありますが、誠実な姿勢が会社を良い方向に向かわせると信じています。

実際に社内で変化はありましたか?

ありましたね。退職者も減り、自発的に考えて動く集団になりました。社員同士のコミュニケーションも生まれて、企業文化が変わったと思います。

大きな転機となったのは、SDGsのプロジェクトを発足させたことです。いきなり世界を変えられなくても、自分たちの手の届く範囲からなら始められる。それが持続可能な会社経営にもつながると思いました。葬儀×SDGsを実践することによって、「ヌマザワらしさ」が磨かれていくといいなという思いもありましたね。

SDGsというツールを使って社員の成長機会をつくり、エンゲージメントを高める。地域に何か困りごとがあったとき「じゃあヌマザワに頼もう」と信頼してもらえる会社になることを目指し活動しています。

素敵な取り組みです!新しいことを始めるにあたり社内で混乱はありませんでしたか?

もちろん、ありました。でもそういうときこそ、経営者である自分の本気度が大事だと思い、目標を「SDGsの取り組みで、地域NO.1・業界NO.1を目指す」と掲げ、自分のコミットメントを示していきました。あとは社員の声を反映できるように、組織やチームを組み直して仕組みから変えていきましたね。そうすることで「社長、本気だぞ」と興味を示し熱量を持ってくれる社員が増えました。

SDGsの活動を通じて、社内が変わっていったのですね。

今では全員がSNS発信の出演もしてくれるほど、前向きに取り組んでくれています。またブランディングやPRの効果もあり、ありがたいことに全国から反響をいただいています。新聞やテレビ出演、地元の若い子がインターンシップに来てくれ採用につながったりと多方面に良いことがありました。

今思うと、何か変わるきっかけを求めていたのかもしれないですね。SDGs自体が営業利益に直結するわけではありませんが、「社員一人ひとりがヌマザワの未来を考える、強い組織に変化した」という成果が残りました。

最後に、今後のビジョンについて教えてください。

私はよく地元の方と街について話す機会が多いため、どうやったら新庄市近辺が持続可能な地域になるのか?を考え続けています。自分をつくることが、会社をつくることになり、地域をつくることが、未来をつくることになる。そうやってできるところから少しずつ良い影響の輪を広げていくためにも、「お葬式ならヌマザワ」「何かあったらヌマザワ」と、地元の人に頼られる存在でありたいです。

社員・地域、そして未来から愛される企業を目指して。これからも挑戦し続けます。

<インタビュー>
つむぎ株式会社 代表取締役社長 前田亮。静岡県立清水東高校、慶應義塾大学経済学部卒業後、新卒で株式会社船井総合研究所に入社。エンディング業界の立ち上げを行い、チームリーダー、グループマネージャーを得て、35歳で部長となり、BtoCサービス業全般を広く携わる。10億円未満の中小企業における「業績を伸ばす組織作り」をコンサルティング領域とする。「信念のあるいい会社」にもっと入り込んだお手伝いをしたいと2020年独立し、つむぎ株式会社を創業する。

<執筆>
貝津美里(かいつみさと)|生き方を伝えるライター・編集者|https://lit.link/misatonoikikata|世代・年齢・性別・国内外問わず人の「生き方」を聴き「名刺代わり」となる文章を紡ぎます。主なジャンルは、生き方/働き方/地域/企業広報editor。世界に一つだけの本づくりサービス「文章で残すアルバム”結びめ”」 も立ち上げました。人と人、人と想い、想いと想いを「結ぶ」書き手でありたい。

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