Interview with the management経営者インタビュー
兵庫
2022.01.29
社会貢献/自己実現
30年前に創業し、神戸市内を拠点に家族葬専門のホールを展開されている「株式会社おお井」。今回は、取締役の大井啓史様にお話をお伺いしました。
神戸市内の葬儀社の中ではかなり早い段階で家族葬専用ホールを設立し、ホームページやSNSにもいち早く取り組まれるなど、新しい挑戦に取り組んでこられた大井さん。「明日へ一歩踏み出すお手伝い」に繋げるための葬儀のあり方や会社の強み、今後のビジョンについてなど、様々なお話を伺っています。
会社創業の流れについてお聞かせください。
「株式会社おお井」は、私の父である今の代表が30年ほど前に創業しました。父はもともと葬儀社に勤めており、独立してこの会社を立ち上げたそうです。
家業の手伝いは昔からされていたのですか?
中学生の頃から、忙しい時期は荷物運びなどを手伝っていましたね。でも雇ってはもらえなかったので、違う業種の仕事に就きました。父は自分の代で会社をたたもうと思っていたようです。この仕事の大変さをよく分かっているのは父だと思うので、私にはやらせたくなかったのでしょう。
もともと私はペットショップで働いていて、最初はショップで販売をしていました。その後は卸問屋の方に声をかけられて、卸の仕事をするように。右も左も分からない状態の中で、独立して仕事をしていたのですが、周りから見るとフラフラしているようにも見えたと思います。自分でも自信を持って「仕事をしている」とは言えない環境でした。
ちょうどその仕事を辞めようか迷っているときに、父から「忙しいから手伝ってくれ」と言われまして。自分の想いと会社のニーズがたまたま合致したこともあり、そのままこの会社で働くようになりました。
会社に入ってからはどのようなお仕事をされていたのですか?
私が会社に入ったのは、ちょうど「家族葬」という言葉が世の中に知られるようになっていった時期で、少しずつ葬祭業界が変化していたタイミングでした。また発注方法がメールに変わったり、請求書をパソコンで作るようになったり、だんだんとデジタル化が進んでいった時期でもあったので、そういった面で重宝されましたね。
当時は総務のような仕事をメインで担当し、会社内の整備を行っていました。葬祭業界ではあるあるでも、他業種で働いていた私から見ると違和感があることも多く、見直しの提案を積極的にしていましたね。
またホームページを立ち上げ、家族葬専用ホールも作りました。神戸市内の葬儀社の中では、かなり早くから動いていたと思います。
父は、もともと自分の代で会社をたたもうと思っていたくらいなので、こういった新しい取り組みには消極的でした。ですが私が入ったことで「それならやってみようか」と想いが変わっていったようで、そういう面でも貢献できていたかもしれません。
これまでどのようなことにチャレンジされてきましたか?
私はまだ代表ではありませんが、自由にチャレンジさせてもらってきました。代表には事後報告で、勝手に新しいことをやってきましたね。
たくさんチャレンジしてきましたが、コロナ禍にはSNSに挑戦し、InstagramとFacebookを運用し始めました。まだまだ発展途上ですが、SNSから集客に繋がったこともあります。
それまでは周りの目も気になって、なかなかSNSを始められずにいましたが、コロナ禍になったことで吹っ切れたんです。コロナの影響で変化せざるを得ないこともたくさんありましたが、それなら逆にコロナを利用して変わってやろうと。あるものは利用しないともったいないですからね。
ちょうど同じ時期に従業員を増やした関係で、外に向く余裕ができてきました。Zoomという便利なものもできましたので、オンラインで今までよりたくさんの方とお会いするようになりましたね。そこから仕事に繋がったこともあります。
大井さんの葬儀に対する想いを教えてください。
葬儀は「明日へ一歩踏み出すお手伝い」だと思っています。葬儀があるからこそ、前を向けるようになると思うのです。
最近は、無宗教での葬儀や火葬式のみを執り行うことも増えていますが、その場合悲しみを引きずってしまう人が多い気がするんですよね。「やっぱりお寺さんを呼んだらよかった」「やっぱり戒名をもらったらよかった」という後悔の声をたくさん聞くので。やはり「儀式」というけじめを取られている方のほうが、前を向く時間が早いイメージがありますね。
後悔の声をたくさん聞いた中で、特に印象に残っているエピソードはありますか?
今もお付き合いのある女性の方との出来事が、特に印象に残っています。息子さんがポータルで探してうちに来られて、ご主人様を火葬式で送らせていただきました。でもその後、どうも気持ちが晴れないとのことで、懇意にさせてもらっているお寺をご紹介したんです。
あれから7〜8年経ちますが、その女性の方は毎月お寺の納骨堂にお参りされています。お会いすると、「大井さんに自分のお葬式のお金を預けておきたい」と言っていただくんです。「息子に任せたら無宗教で送られそうだから」と。自分が後悔したからこそ、「きちんと葬儀が行われるように道を作っておきたい」と考えていらっしゃるようです。
そんなにも辛い思いをさせてしまったことに対して、後悔しています。パッケージやプラン上どうしようもない部分もあったので、もどかしさもありますね。
その方とお会いしたくらいから、後悔の声をたくさん聞くようになりました。特にここ数年、ポータルサイトができて「安さ」が重視されるようになってからは、顕著に増えた気がします。
そのエピソードを経て、何か意識されるようになったことはありますか?
もともと無宗教を希望される方には、しっかり案内するようにしていたんですよ。きちんと理由を伺って、信心がないからなのか、費用面での問題なのか確認するようにしてきました。
その中で「費用面でしんどい」という理由の方には、丁寧に様々な価格の提示をするようにしています。また、どんな方でも来ていただけるように、宗派によって差が出ないような努力をするようにしていますね。そういった声かけを徹底しているからか、他社と比べると無宗教の葬儀数が圧倒的に少ないです。
宗教を大事にされる中で、宗教者の方とはどのように関わるようにされていますか?
お寺の方とはなんでも言える関係を築いています。協力してもらうだけでなく、「伝える」という姿勢も大事だと思うからです。その代わり、協力できることはなんでも無償で提供するようにしています。宗教者の方とともにお互いを高め合うことが、「明日へ一歩踏み出すお手伝い」に繋がっていくと思うのです。
宗教に関してはお寺の方がプロなので、基本的に任せています。私たちの仕事は、お客様と宗教者の方を繋ぐこと。私たちが宗教について詳しいことまでしてしまうと、目的がずれてしまうので、そこはきちんと役割を分担しています。
そして私は、宗教による葬儀を大事にすることが、葬儀社が生き残る術でもあると思っています。葬儀は許認可制ビジネスではないので、無宗教になると誰でもできてしまう。それは私たち葬儀社が一番危惧しなければならないことです。
宗教者の方に「この葬儀社だから、安心して任せられる」と言っていただけるような葬儀社であること。これが、私たち葬儀社のステータスではないかと思っています。
会社の強みについては、どのように考えていますか?
私たちは、生活保護の方から社葬まで、幅広く対応させていただいています。中小企業ですので、大手企業がなかなか手の届かないような、自宅葬や寺飾りなどを得意としているんです。ノウハウも施行件数もしっかりあります。
「他ではできなくて、探し回ってたどり着いたのがおお井さんだった」という声もよくいただきますね。自宅葬に強くこだわっていらっしゃるお客様は、いろんな葬儀社から断られることが多いようで、できるとお答えすると「できるんですか?」と驚かれるんです。
他にも、繋がりのあるご住職が亡くなられた際に、その方の寺院葬をお引き受けすることもあります。かなり準備が大変なのですが、代表が「自分で送りたい」と言うんです。知っている方だからこそ、代表は「自分が一番いい形で送れる」と考えているのだと思います。
代表は、あまり自分の想いを社員に共有する人ではないですが、お客様とお寺の方を本当に大事にしているということは節々から感じます。お客様の中には10年以上もお付き合いがあり、今でも月命日に必ず花を注文してくださる方もいらっしゃるんです。それは、代表がお客様を大事にしてきたからこその繋がりではないかと思います。
最後に、今後のビジョンや課題について教えてください。
これまで広告にはまったくお金をかけていなかったのですが、これからは広報にも力を入れていきたいと思っています。リピーターや近所の方のおかげでここまで来られましたが、まだまだ認知度の高い会社ではないので、そういった広報の面もきちんと視野に入れていきたいです。
また、今まいている種が実りだすと今の人員では難しいと思うので、最低でもあと2人は雇いたいと思っています。私の次の承継についても考えていかなければならないので、役員候補への教育もしていきたいです。私は人を教育するのが苦手で、すぐに手や口を出して、我慢できずに自分でやってしまう。今後の私の課題は社員教育ですね。
何年も前から、中小企業は一本柱でやっていける時代ではないと言われてきましたが、私の会社にはまだ主軸となる軸が一本しかありません。ですので、今後はもう一つの柱となる事業も新しく始めたいと思っています。
私は「株式会社おお井」という看板を守っていきたい。中小企業として生き残る道を見つけるために、これからも様々な挑戦をしていきたいです。
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