Interview with the management経営者インタビュー
和歌山
2022.03.26
社会貢献/自己実現
和歌山県に拠点を持ち、活動しているヴイ・クリエイト。辻本葬祭とアスタサービス、2つの葬儀社が合併し、2020年に歩みをはじめた会社です。ラポールホールディングスというホールディング会社の下、葬祭業に関わらない、人にフォーカスしたサービス業を展開しています。
お話を伺ったのは、ラポールホールディングス、ヴィ・クリエイトの代表取締役・辻本和也様。
辻本様は働かれているお父様の姿を原体験に葬祭業へ。働いていくなかで自分、お客様、そして従業員と重きをおく視点が変わってきたと話してくれました。
なぜ辻本様の持つ視点は変わっていったのか?合併、そして異業種への進出にはどのような想いがあるのでしょうか?
辻本様の考えるサービス業の本質に迫っていきます。
―――最初に合併前の会社・辻本葬祭さんの歴史をうかがってもよろしいですか?
はい、辻本葬祭が創業したのは昭和20年ごろ、祖父が行っていた町の葬儀のお手伝いから始まったと聞いています。昭和21年に生まれた父にとっては、「葬儀屋」であることが当たり前の状況だったようです。
父が2代目を継ぎ活動を続けていくなかで、私が中学生のとき、辻本葬祭にとって大きな転機が訪れました。それは、和歌山市内の葬儀社さんで作る組合に辻本葬祭も加わらないか?といったものでした。当時は大きな会館を持っている葬儀社さんがいなかったので、みんなでお金を出し合い、共同で使える会館を建てたいという狙いがあったんです。
そのころの辻本葬祭は、父の代だけであれば加入しなくても問題ない経済状況でした。そこでキーとなったのが私の存在です。父の代だけなら心配ないけれど、私が継いだ場合の補償はできない。そう考えた父は、
「お前が継ぐなら、組合に入る。継がないなら組合に入らずこのままやっていく。どうする?」
と私の判断を尊重してくれました。
ですがまだ中学生になったばかりの私にとって、その提案は実感がわきません。決断に当たって思い出したのは働く父の姿です。家で過ごすことも多く、お葬式が発生すれば何日か家を空けて、そして帰ってくる。子ども心に「どんな仕事をしているのか?」という想いもありました。
そんなある日、たまたま父の仕事現場を目にする機会がありました。葬儀で司会を務める父の、普段とはまるで違う姿に憧れを感じ、継ぐことを決意。辻本葬祭は組合に入ることとなりました。
その後は中学、高校を経て、大学へ進学。「卒業後はきっと有意義な人生が待っているんだ」と淡い期待を抱きながら大学生活を過ごし、卒業後、実家へ戻りました。
しかし実家に戻った私を迎えたのは、まるで違うものとなった業界の様子でした。家族葬が流行しはじめ、価格の安い葬儀が好まれるようになっていたのです。父と話しあい、これからは葬儀社でも会社的な経営が必要になることや、辻本葬祭があまり葬儀を受けられていなかったことなどから、組合が経営している会社・アスタサービスへ就職し、葬儀の経験を積むこととなりました。
―――働かれてみた葬儀業界の印象はどうだったのでしょう?
働き始めた頃の感情は「思っていたのとは違う」の一言でしたね。父が働く現場をそんなに多くを見ていなかったこともあり、少し簡単に思っていた部分はありました。
しかし先輩に教えてもらったり、打ち合わせや担当などお客様と関わったりするなかで、その感情も変わり、だんだんと良い仕事だなと考えていくようになりました。
現在のラポールホールディングスの会長である神出とはこの頃に出会い、葬祭業やビジネスに関するさまざまなことを教えてもらいました。
アスタサービスに勤務をして8年ほど経った頃、2回目の転機が訪れます。アスタービスがある組合の会館の近く、辻本葬祭からも近い場所に、会館を建てられるほどの土地が空いたんです。組合の当初の計画は、幾つもの会館を建てていくことだったので、当然その土地にも会館を建てようという話が持ち上がりました。しかし組合の中には会館から遠いところに拠点のある葬儀社さんも存在し、話し合いはなかなか前に進みません。
そんなとき、神出から「辻本葬祭に戻って、新たに会館を建ててはどうか?」と提案されたんです。私も家族葬専門会館をやってみたい、という気持ちもあり、提案を受け辻本葬祭に戻ることに。
そして2008年、辻本葬祭の自社会館をたてると同時に、辻本葬祭へ戻ることとなりました。
―――アスタサービスで、葬祭業をビジネス的な観点で進めていくことを学ばれたわけですね。辻本葬祭に入られてからは、どういった歩みをされてきたのでしょう?
先代である父のサポートも受けながら、会館を建てた一年後に、代表を引き継ぎました。
その後、1店舗目が成功したことを機に2店舗目を出店。こちらも成功し、3店舗目へと拡大していったのですが、そこでつまづいてしまいました。今思えば1店舗目から2店舗目の時期は、家族葬という和歌山に浸透していなかったものを持ってきていただけで、「家族葬専門会館」や「和歌山発のリビング葬会館」などフレーズだけで勝っていたようなものだったんですよね。
2店舗目以降の出店した時期は、他の家族葬を提供する葬儀社が進出してきていて、強みであった目新しさがなくなってきてしまっていたんです。
ただ当時の私は経営の勉強をしておらず、その点に気が付くことができませんでした。とにかく手元から消えていくお金を埋めようとポータルサイトに登録し、どんな小さい案件でも対応するように。必死に売上を積み上げていったのですが利益が残らず、その仕組みが理解できていなかったことが重なって、ただ忙しくなるばかりの完全な悪循環に陥ってしまっていました。
―――その悪循環からはどのように脱したのでしょう?
ある葬儀社さんと出会い勉強をし、経営、そして葬儀に関しての考え方が根本から覆りました。
当時の私にとって葬儀は、売上を作る、そして実績として自分を立派に見せるためのツールでしかありませんでした。しかしその葬儀社さんでの勉強を経て、「葬儀とはお客様のためにあるものだ」と意識が変わり、業務でもお客様を中心に据えたサービスをしようと、従業員へ指導していきました。
しかしそれは、多くの件数をこなしながら、全てにおいてサービスの向上を目指す、ある意味正反対な施策を展開している状況。みるみるうちに、従業員の顔に疲労の影が見えるようになっていきました。
やがて、従業員のなかで人が亡くなることや、お葬式への価値観下がっていき「なんのために葬儀の仕事をやっているんだろう?」といったムードが漂い始めた頃でした。
「これが続くと、私たち、社長の言っているお葬式はできません」
と、意見を伝えてくれた社員がいたんです。衝撃的でした。
この言葉を受けてはじめて、やっていることの方向性と、言っていることの方向が全く違っていることに気がつきましたね。
そうしてポータルサイトを一気に辞め、一件のお葬式に集中できる環境を整えたんです。単価は上がりましたが、同時にクオリティが向上したため、売上に大きな変化はなく、また利益率を改善させることができました。
―――お客さまに対するサービスを向上させるために、まずは従業員さんの環境を整え、一件一件に集中できる環境を作りあげることが大切だったんですね。
ただその上で私には、若い頃にかかげた目標に向かいたいという気持ちもありました。それは私たちの届けるサービスで47都道府県を制覇するということ。
この目標はアスタサービスに在籍していたころ、神出の主催する勉強会で発表したものです。深い理由は自分でもわからないのですが、パッと思いついた目標で……。当時は子どもだったのかもしれませんね(笑)ただ目標について考えると、今でもそれが浮かび、ワクワクしてくるんです。
47都道府県を制覇するためには、もっと規模を拡大していかなければならない。でもそれは私たちだけでは難しいと判断し、仲間を増やしたいと、かつてお世話になっていたアスタサービスの神出に話をしたんです。
そしてまずはホールディングス会社を立ち上げ、その後葬儀部門を合併し、ヴィ・クリエイトを設立しました。それぞれの会社で行なっていた雑貨店やお弁当屋さんもホールディングスにぶら下げた形で継続する形をとっています。
―――今後はさまざまな業種に展開されていくということでしょうか?
はい。合併時に神出と意見を交わした結果、葬祭業に限らず、いろいろなサービスを展開していこうという考えになったんです。
「お葬式はひとつのコンテンツであり、Face to Face・顔を合わせることのサービスを提供したい」そして「47都道府県にサービスを届けたい」という目標をかけあわせたときに、サービスとはなんなのだろう?と見つめ直してみたんです。
サービスとは買ってくださったお客様が幸せになり、暮らしが良くなるもの。
それをつきつめたとき、ならばサービスの提供を担うのは社員であり、社員こそが、私たちの商品なのだという答えに辿り着きました。
社員こそが私たちの商品であり、彼らのサービスを通したつながりで、お客様の幸せをつくりたい。今はさまざまな業態を絡めながら47都道府県へ、キラキラと輝いている社員を届けていけたらと考えています。そのために必要なのは、社員の満足度を向上させることです。今は合併したばかりで、環境やルールの違いに、社員は戸惑ってしまっているんですよね。
まずは神出と私の中にある想いを言葉に落とし込んで、社員たちへ伝えていく。そして会社の環境を整えたのち、社員たちへ「コンテンツを通して、あなたは何を届けていきたいですか?」といった部分を深め、全員で成長していきたいと思います。
社員に「この会社で働いていてよかった」と思ってもらえるような取り組みを行っていきたいですね。
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