Interview with the management経営者インタビュー
新潟
2022.10.14
社会貢献/自己実現
新潟県新発田で事業を展開する花安 新発田斎場。常務を勤めるのは渡辺安之様。花安としては16代目、葬祭業の代表としては3代目に当たり、渡辺様は当時を「プレッシャーは相当なものだった」と振り返ります。
実質的な承継後は方向性を模索し、歴史を振り返ることでミッション・ビジョン・バリューを制定。社内外に対し、さまざまな取り組みを展開していきました。花安のミッション・ビジョン・バリューの軸は何なのか?結果、どのような施策が行われるようになったのか?目指す未来とは?
脈々と繋がれてきた花安の想いに迫ります。
はじめに、創業の経緯を教えてください
花安の始まりは、1635年・江戸時代にまで遡ります。記録によると初代にあたる安兵衛という方が、溝口秀勝という大名とともに石川県から移り、この地で商売を始めたそうです。その際におこなっていた商売が花屋だったため、“花屋の安兵衛”と名乗り、やがて現代まで続く花安となっていきました。
初代から数えると私は16代目ですが、葬祭事業の観点から見ると3代目にあたります。葬祭事業をはじめた祖父。それを育てた父。それ以前に連綿と続いてきている、“花安”の歴史……。
16代目、3代目として事業を引き継ぐことのプレッシャーは相当なものでしたね。
そうだったのですね。実際に事業を引き継がれてからはいかがでしたか?
事業を引き継いでからは、この先どう事業を展開していけばいいかと悩む日々でした。大手の葬儀社さんに憧れ思想を学んだ時期もありましたが、どこかしっくりこず……。そこで改めて私たちの強みを立ち返ってみることにしたんです。
私たち花安の特徴は、なんといってもその歴史にあります。しかしなぜ花安はこれだけの期間、商売を続けてこられたのか?祖父の代から始めた葬儀事業は、なぜ私の代まで続いているのか?
そうして浮かんできたのは、“縁”という言葉でした。
お殿様からお墨付きを得て始まった花安のバトン。それをたくさんのご先祖様が、たくさんの地域の方とのご縁を紡ぎ、繋いできたからこそ、今、僕の元にあるんです。そう考えたとき、葬祭事業を創設した祖父の口癖を思い出しました。
「亡くなった人に優劣はない。善人でも、悪人でも、死ねばみんな仏になる。」
祖父はもしかしたら、今の私と同じように “縁”という言葉にたどり着いていたのかもしれません。もしそうでなかったとしても、とにかく、この想いをどうにか形にしたい。
こうして、「過去、現在、未来の縁を通して、全ての人は豊かな人生を生きる」というミッション、そしてそれに紐づくビジョンやバリューが生まれたんです。
ミッション・ビジョン・バリューが定まったことで、何か変化はあったのでしょうか?
ミッションなどが定まったことで「生きることを中心に事業を展開していこう」という、軸を見つけられました。さまざまな挑戦を始めましたが、典型的なことは観光施設の運営をきっかけにクラフトビール事業を開始したことでしょうか。
クラフトビール……ですか?
先ほどもお伝えしましたが、私たちの強みは「縁」にあります。
例えばほんの数年前までは、お客さまへアフターフォローとして27回忌までお花をお贈りしてました。ご家族の方から怪訝なお顔をされてしまう場合もありましたが、そのくらい縁を大切にしているんですよね。流石に今は7回忌にまで減らしましたが……(笑)
こういった事例のような、たくさんの方と縁を繋ぐ取り組みが何かできないだろうか?と考え、お寺さんを巻き込んで地域のイベントを開くようになったんです。
地域が元気でないと、葬儀屋の事業は続いていきませんからね。
イベントでは、固いイメージのあるお寺でヨガやビールなどが楽しめること、まだコロナ前だったことなどの要因が重なり、たくさんの方が来てくださりました。
やがてイベントの中心施設となる観光協会が運営されてた道の駅のバトンを弊社に引継ぎ、お土産カフェを開始。そのカフェで、地域の方々を繋ぐ自社商品を売りたいと考え、イベントを通じ知り合った仲間たちと共に、クラフトビールの醸造・販売を始めたんです。
葬儀は、どうやっても“死”によって引き起されたマイナスの気持ちをゼロに戻すことしかできません。しかし、地域の特産やビールであれば、気持ちをプラス方向へ導くことができるんです。
また不思議なことに、お客さまはうちのビールのことを「私の街のビール」と紹介してくださるんですよね。
縁を繋いで、人生を豊かにする。
このクラフトビール事業は、理念に繋がっているんです。
それは驚きました。社内では何か変化はあったのでしょうか?
スタッフに「花安にいてよかったな」と感じてもらえるよう、ミッション・ビジョ・バリューに連動して、社内のさまざまな制度をアップデートしていきました。
例えば評価制度が挙げられます。
クラフトビール事業などのチャレンジをしてわかりましたが、新規サービス開発をする際は、ある程度属人的になっても、やりたい人がやった方がうまくいくんですよね。そのため、チャレンジをしてくれたときに適切な評価ができるように、目標の立て方を変えていったんです。
またHRにも力を入れてきたいと、働き方改革や新しいツールなどを導入。関連して業務の見える化がなされ、なぜ業績がいいのか?といったノウハウが共有されるようになりました。また年功序列型、終身雇用制度も廃止に。
結果みんながモチベーション高く業務に取り組んでくれるようになりましたし、やりたいことを打ち明けてくれるようになり、ボトムアップ型の取り組みが増えていきました。
ほかにも意見交換の機会が増えたり、トラブル回避の仕組みも整ったりなど、ミッション・ビジョ・バリューを通して、新しい企業文化が生まれたように感じています。
ありがとうございます。最後にこれからについてお聞かせください。
ミッション・ビジョ・バリューの制定、それに関する取り組みを通して、僕たちは、今いる人、ある物を最大限活用することの大切さを学びました。
コロナ禍を経て、その想いはさらに深まっています。
今後は、社員も含め、今、親しんでくださっている地域の方々と、どうやってこの先何十年もの関係性を築いていくか?どうやってお互いに良い効果を生み出せるか?を追求していきたいと思っています。
将来的には、今展開している葬祭事業や地域事業、墓地事業などを分社化。ホールディングスとして繋がりながらも、それぞれの事業を突き詰めていきたいんです。
今はありがたいことに、イベントを通して、うちにインターンに来てくださっている学生もいます。
そうやって想いを共にする仲間を増やしながら「過去、現在、未来の縁を通して、全ての人は豊かな人生を生きる」を、体現していきたいと思っています。
<インタビュー>
つむぎ株式会社 代表取締役社長 前田亮。静岡県立清水東高校、慶應義塾大学経済学部卒業後、新卒で株式会社船井総合研究所に入社。エンディング業界の立ち上げを行い、チームリーダー、グループマネージャーを得て、35歳で部長となり、BtoCサービス業全般を広く携わる。10億円未満の中小企業における「業績を伸ばす組織作り」をコンサルティング領域とする。「信念のあるいい会社」にもっと入り込んだお手伝いをしたいと2020年独立し、つむぎ株式会社を創業する。
<執筆>
紡ぎ手 高橋昂希。フリーライター/フォトグラファー。 ストーリーを軸に据え、インタビューやレポートの執筆、物撮りやコーポレート撮影をおこなっています。
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