Interview with the management経営者インタビュー

みんながご機嫌に生きられるように。不安を安心に変える存在〜㈱ 濃飛葬祭〜

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岐阜

2023.02.24

社会貢献/自己実現

みんながご機嫌に生きられるように。不安を安心に変える存在〜㈱ 濃飛葬祭〜

岐阜県に拠点を持ち、活動している㈱濃飛葬祭(以下のうひ葬祭)。1981年に現会長である鈴木朝典様が39歳のときに、岐阜県加茂郡川辺町にて創業しました。それまで10年近くにわたって葬儀関連の問屋で働いていた経験を踏まえての独立開業でした。今では、美濃加茂市、可児市、八百津町にある7つの自社式場を中心に、地域で最も多くのお別れに携わることができています。

「ただの葬式ではない。誰かに伝えたくなる、そんなお別れの式を」作るために、日々お客様と向き合っています。

今回お話を伺ったのは、のうひ葬祭の代表取締役・鈴木様。鈴木様は納棺をされていたお母様の死をきっかけに真剣に葬祭業と向き合うように。元々葬儀業界で働いていたものの、いざ自分が見送る遺族側を経験したことで会社やお客様に対する考え方が変わったと話してくださいました。

どのようにして鈴木様の持つ視点は変わっていったのか?
とにかく会社を大きくすることだけを考えていた鈴木様が、一度立ち止まり、”人”を見るようになった。そこには、悲しい経験と地域のお客様だけではなく、社員の不安も安心に変えたいという強い思いと愛がありました。

―――最初に鈴木様が社長になった経緯を伺ってもよろしいですか?鈴木様にとって、大きなターニンングポイントでもあるとか。

のうひ葬祭が創業したのは1981年です。10年近くにわたって葬儀関連の問屋で働いていた経験を踏まえて、父が開業しました。「独立して始める仕事がなんで葬儀屋なんだ」と家族をはじめ親戚中からは大反対の中での始まりだったようです。結局、唯一母のみが父の真剣な姿を見て自分でもできることはないかと考え、父がやっていた『納棺』をやることを決意し、2人で進めていくことになりました。当時、女性が納棺を担当することは全国的に見てもとても珍しいことでした。地域からは、とても丁寧にやってくれると信頼されていました。

どんどん会社を大きくしていこうとするなかで、私が31歳のとき、のうひ葬祭にとって大きなできごとが起こりました。
それは、納棺を務めていた母の死でした。「地域で1番の会社になりたい」という思いを果たすことなく、わずか53歳の若さでこの世を去りました。このときに、初めて自分が見送る遺族側を経験しました。この経験が、いまの、のうひ葬祭の形を作っているといっても過言ではありません。

葬儀のプロとして10年近くやってきて、遺族の悲しい気持ちなどはわかっているつもりでした。しかし、いざ自分の母親がなくなると、何も手につかなくなり、言いようのない不安に襲われました。そして、ただただ時間だけが過ぎていくのを感じました。

そんな状況のなかで、私にとってたいへん印象的なことがありました。それは、ふとホール内に並んだ供花を見ているときのこと。なんとなく眺めていただけだったのですが、気づいたら涙があふれていたのです。
今まで、供花の存在にあまりこだわったことはありませんでした。名前が違うと注意を受けたこともありました。当時は、「そんな細かいことを言ってきて…社交辞令で出しているものだろうに」とさえ思っていました。

しかし、自分の母親に送られてきた多くの供花、そこに書かれている一人ひとりの名前を見て、こんなにも母親や自分たち家族のことを想ってくれる人がいるのだと。大きな不安に包まれるなかで、心が温かくなるのを感じました。

改めて遺族の立場に立ち、同時に思ったことがありました。同じ日に何件も葬儀があったら、遺族はしっかりと悲しみに向き合えないのではないかと。私の母の葬儀の際は、自分たち1件のみの葬儀で、だからこそ供花を見ながらひとりひとりのお顔も思い出すことができましたし、自分を振り返る時間を作ることができました。この時間こそが、遺族のこれからの時間をどのようなものにするか決めるのではないだろうかと。そのころの私は、とにかく規模の拡大、儲かることだけを考えていました。ゲーム感覚で仕事をし、件数を増やすことに懸命になっていたのです。このままではだめだと立ち止まるようになりました。そして、まずは1日1件の葬儀施行を大切にしていこうと決めたのでした。

自分が遺族側になってみて、「人に死は、残された人たちに必ず何かを伝えるためにあるもの」である。そして、「その場を作るのは、自分たちである」と強く確信しました。

―――その2年後、父の跡を継いで社長になられたわけですが、その後の会社は順調に進んでいったのでしょうか?

それが元々お金がなく、現金商売だから回っているようなものだったので、これからどうしていこうかと頭を抱えました。お金がないなかで、ライバル会社に勝つためには式場を増やさないといけない状態でした。

どうしたものかと考えていたときに、たまたま地元の青年会議所で一緒に活動していたゼネコンの方が「私が式場を建てて、そこを借りてはどうだろうか」とお声掛けくださいました。私は、ありがたくそのお話を受けることにしました。そして、この1件をモデルにして、1,2年ごとに1店舗ずつ増やし、どんどん展開していくことに成功しました。

―――2004年には、ミッション(使命)とクレド(行動指針)を制定されていますが、何か作るきっかけなどがあったのでしょうか。また、ちょうどその頃、成長戦略に行き詰まりを感じていたとのことですが、何かミッションとクレドの制定に繋がるものがあったのでしょうか?

ある方のセミナーに行った際に、形がないものを提供するサービス業だからこそ、会社として何に価値を置いているかをしっかり言語化しておいた方がいいと言われたことがきっかけでした。

会社が順調に成長し、地域で1番となり、売上も伸びていくなかで、私はがっかりすることがありました。それは、会社が成長したことに対し、社員が誰も喜んでいなかったことです。会社が発展することは、当然、社員のみんなが喜ぶだろうなと私は思っていました。しかし、そうではなかったのです。思わず、何のためにやっているのだろうと思ってしまいました。

そこで、私はそれぞれが自分のなかで、「何のためにやるのか」という大義が大事だと感じました。そして、ミッションとクレドを制定することに決めたのです。

制定後、すぐに何かが変わるということはありませんでしたが、私から伝え続けることで、ミッションとクレドを意識できる社員は増えたように思えます。

また、新卒採用の際には、ミッションとクレドを制定しておいて良かったなと思いました。私たち会社のことを伝えやすくもなりましたし、受け手も理解しやすくなりました。

―――最近では、人材育成のプロジェクトを始められたとか?

以前まで、職種ごとにわけて採用を行なっていたのですが、今は総合職としての採用をしています。会社に入ってから、自分に合う仕事を見つけてくださいというスタイルになります。ですので、弊社は葬儀会社ではありますが、葬儀の仕事をしてくださいとはお伝えしていません。

職種ではなく、人で誘っています。私は、働くうえでスキルよりもマインドが大切だと思っています。人が会社をやめる理由として、人間関係が多いため、私たちの会社にはこういった人たちがいます。このコミュニティに入りませんか。とお声掛けをしているのです。

ここ最近では、「仕事に人をつける」ではなく、「人に仕事を合わせられるか」といった考え方をしています。1番幸せなのは、自分の特技で人を幸せにできることだと思っていますので。

ここでいう得意とは、自らが得意と思うものではありません。自分では得意だと気づかない、周りが気づくその人の得意になります。その状態を作るために、今は社内の関係性の質を高めることに力を入れています。

―――次に、社長が目指すところはどこになるのでしょうか?

私たちのミッションである「お客様の不安を安心に変える」を、今度は「”地域の”不安を安心に変える」ことをしていきたいです。ライフエンディングカンパニーとして、葬儀に限らず、もっと広い目で地域のお困りごとを解決できるようになっていきたいですね。

葬儀の件数を増やしていくというよりは、サービスの多角化を図っています。その一歩として、少し前に新しい試みとして、不動産業も始めました。

また、のうひ葬祭の強みは「自分の強みを活かせること」だと思っているので、その環境づくりをより行なっていきたいと考えています。自分を肯定できるのは、自分しかいないので。自分のことを他人に委ねるのではなく、それぞれがご機嫌に生きられるようにしていきたいですね。

<インタビュー>
つむぎ株式会社 代表取締役社長 前田亮。静岡県立清水東高校、慶應義塾大学経済学部卒業後、新卒で株式会社船井総合研究所に入社。エンディング業界の立ち上げを行い、チームリーダー、グループマネージャーを得て、35歳で部長となり、BtoCサービス業全般を広く携わる。10億円未満の中小企業における「業績を伸ばす組織作り」をコンサルティング領域とする。「信念のあるいい会社」にもっと入り込んだお手伝いをしたいと2020年独立し、つむぎ株式会社を創業する。

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